個人情報を扱うならインターネットから切断するのが常識・・・とはならないで欲しい

市町村にネット遮断要請へ 厚労省、年金情報流出で

個人情報を扱うなら、インターネットから切断するのが常識・・・とされそうで危惧してたんですが、案の定その方向に動いていて頭を抱えています。インターネットから切断するのは、案外難しく、実効性を持たせるのは大変なのです。

1.業務ができるのかということ。
端末入力業務程度しかしないのであれば、確かにネットから切断しても問題ないのだけれど、ほとんどの場合は情報を加工したり、あるいは別の形で利用したりしなければ意味のある業務になりません。業務をよほど詳細に分析し、場合によっては根本から見直さないと、結局のところ情報を外に持ち出すことになります。USBメモリで、CDで、あるいは印刷した紙媒体で隔離されたネットワークの外に持ち出して仕事をするわけです。実務担当者にとって、与えられた仕事を遂行することが優先しますから、例外として持ち出すことを認めれば当然持ち出します。最初は仕方なく持ち出すのだと緊張していても、それが常態化すれば感覚は麻痺していきます。

2.持ち出された情報は追跡できない。
持ち出された情報がどうなったのか、追跡するのは非常に困難です。紙であろうと、USBメモリであろうと、容易に複製出来ます。他の媒体に持ち出された時点から、誰によって閲覧され、複製が何処にあるのか追跡することが著しく困難になります。
全てオンラインシステム内で扱っていれば、何時誰が作成し、閲覧あるいは複製したか追跡することも可能です。あるいはファイルサーバー内のファイルを精査して、個人情報が含まれてないか調べることも出来ます。インターネットから切断したことで、頻繁に個人情報をシステム外に持ち出して業務をするのでは、むしろ全体的なリスクが増える事になるのです。

3.メンテナンスも困難になる。
インターネットから切断したからと言って、メンテナンスをしなくてよいというわけではありません。業務用に作成したプログラムの更新やセキュリティ更新プログラムのインストールなどは常に発生します。
インターネットに繋がっているのであれば、セキュリティ更新プログラムのインストールなどは半自動で実行されるのですが、インターネットから切断されるとそうはいきません。セキュリティ更新プログラムをダウンロードし、それが確かにベンダーが提供しているものなのかを確認し、隔離したシステムに導入する必要があります。隔離しているのだから更新プログラムを当てなくても良いのではと思うかもしれませんが、そうはいきません。業務用に作成したプログラムの更新など、何らかの形で外部からファイルやデータを持ち込む可能性があるなら脆弱性を放置するわけにはいかないのです。

このあたりを無視して切断した結果、個人情報を隔離したシステムから持ち出すのが常態化して、情報漏えいにつながったのがまさしく今回の年金情報流出事件でしょう。さらに別の組織にまでインターネットからの切断を求めるなんて、今回の事件からいったい何を学んだんでしょう?

ではどうすれば良いのかというと、セキュリティーの基本となる、アクセス権の管理と、ログによる監視をしっかりと行うことです。基本ができていないのに、インターネット接続だけ遮断しても、絶対にうまくはいきません。

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