働き方改革というと労働者の為の余暇拡大とか従業員側のメリットから論じているけど、経営的側面からは労働力のリスク管理のあり方を見直しましょうって話でもある。
残業を減らす事の意義
5名からなるチームにおいて各人2時間の残業を常態として行っていた場合、メンバーの1名が病気その他の突発的な理由で業務に当たることが出来なくなった場合、残り4名がさらに2.5時間ずつの残業を行う事になる。1日4.5時間、20日間で90時間におよぶ。これは過労死ラインとされる水準(80時間)を既に超えている。
では各人1時間程度の残業が常態化していた場合どうなるのかというと、1日3.25時間、20日間で65時間となる。これは三六協定で上限とされる42時間(または45時間)を遙かに超過する残業時間となる。
このように残業が常態化していると、あっという間に業務崩壊してしまう。この場合は速やかに事態を改善すべく人員を増やすことが必要なわけだが、既に新人教育を行うリソースすら残っていない。即戦力になる事を祈って経験者を募集するか、さらなる残業を積み上げて新人教育を行う事になる。だが労働人口不足が叫ばれている中、容易ではない。
ちなみに残業無しの1日8時間勤務であった場合、1日2時間、20日間で40時間となる。ギリギリ三六協定の規定範囲内となる。残業が常態化している場合、従業員の長期休職や、離職といったリスクに対応できないのである。
在宅ワークの意義
残業ゼロであっても、前述の通り一人抜けただけで月間の残業時間は40時間に及び、労働量は限界に近い状況になる。この上にさらにトラブルでも降りかかれば破綻する。
同じ作業量をこなせないとしても、職場以外の場所で一部業務だけでも継続して遂行できれば、残ったチームメンバーへの労務負担を減ずる事が出来る。
出勤できなくなる理由は様々だが、天災人災や時間的理由で出勤困難であったり、介護などで自宅から離れられないだけならば、在宅ワークを認めることで一部業務の遂行は可能だ。
いざ出勤できなくなってから慌てて「在宅で仕事を・・・」と行っても出来る事ではない。在宅で出来る仕事、出来ない仕事の仕訳、在宅で仕事をするための技術的な環境、出勤者との連携など、事前に解決しておかなければならないことは多い。平時から週に1~2度在宅勤務を行わせ、在宅で仕事をすることを前提とした業務フローが出来てるからこそ、有事に在宅勤務という選択を取らせる事ができる。
従前、高リスクな従業員を職場から排除したり、あるいは閑職に回すことで、リスク管理に対処してきた面がある。雇用機会均等法など何処吹く風、女子には寿退社を前提としたキャリアパスを、既婚女子には誰でも代替できる簡単な仕事を、年齢が上がれば役職定年で閑職へ。でも労働力不足、雇用難の時代がすでに始まっていて、今までの方法ではリスク管理ができなくなる。そういう意味でも、経営者には働き方改革の波にのってほしい。会社と従業員、互いにメリットのある話なのだから。