Windows XPサポート終了におけるIT業界の責任

Windows XPサポート終了におけるIT業界の責任(http://japan.zdnet.com/cio/sp_13matsuokaopinion/35044036/)という記事について、各所で色々意見されているので、私も纏めておきたい。

多くの論調は「ユーザー責任であって、IT業界に責任を求めるのは筋違いだろう」という物だが、ある面においてIT業界にも責任はあると思う。IT業界は維持運用にかかるコストについて、説明責任を果たしていなかったと思う。

独自開発したソフトウェアの維持コスト

日本では多くの企業が基幹システムとして、パッケージソフトをそのまま使うのでは無く、大幅にカスタマイズして独自機能を盛り込んだり、あるいは全くの0から独自システムを開発してきた。

これらのソフトを数年おきに発売される最新のOS等に対応させ続けるためには、本来なら開発者を囲って開発体制を維持するコストが必要になる。システムの細部の実装までドキュメント化して残しておくことはきわめて困難だし、また半年も担当から離れれば詳細な実装部分について忘却してしまうことは、開発者なら経験的に知っているはずだ。もし新しいOSや問題に迅速に対処しようとするなら、一定人数の開発者を開発完了後も独自開発したシステムに携わり開発体制を維持し続ける必要がある。

独自システムというのは作って稼働したからといって、そこで開発を終了してはならないものだった。昨今言う継続的インテグレーションを行ない、一定のコストを払い、常に改善や新機能の追加をし続ける必要がある。そうしなければ開発体制を維持する事は出来ない。

今多くの企業では、必要になってから技術者を集め、リバースエンジニアリングを行ないつつ、新たに開発体制を作り直すと言う方法を取っている。既存のシステムを解きほぐし、結果から過程を再現していくのは、相当に有能な人材を集めないと出来ないし、時間もかかる。また、古い開発環境と、新しい開発環境の両方に精通した人材を集める必要もあるので、構成人員のキャリアは高くなりがちになる。そのための予算も事前に考えてないし、コストも高く、人材も確保できず、時間も足りず、移行できない状況に陥っているのだろう。

 

ソフトウェアを売切りにしてしまったこと

二つ目のIT業界の責任は、パッケージソフトウェアを売切りにしていることだと思う。Windows XP発売当初、保守サポートの有効期限は区切られていなかった。ユーザーにとっては初期費用を払えば、追加コスト無しで使い続けられる製品だったわけで、ここに嘘がある。

安全に使い続けるためには保守が必要不可欠だというなら、売切りにすべきでは無かった。維持にコストがかかるなら、それを素直に料金体型に反映させるべきだったと思う。現在Adobeがいち早く対応したが、月額などの継続的に料金を支払い続けるシステムにすべきだったと思う。

WindowsXPだけの問題では無い

実はWindowsXPだけが大きな問題になっているが、同様の問題は他にも複数発生しつつある。

例えばAndoroidスマートフォンでは携帯電話メーカーからOSのアップデートが提供される事は殆ど無い。Andoroidの開発元であるGoogleは定期的にアップデートを提供しているにも関わらず・・・だ。セキュリティ上の問題はいくつも見つかっており、本来ならアップデートを提供すべきだが、売切りの状態のまま殆どの場合放置されている。もしセキュリティ問題の無い状態で使おうと思ったら、半年ごとに端末を買換える必要がある状況だ。でも携帯メーカーはそんな説明をしていない。

最近はTV等の家電もインターネットに接続する機能を有している。攻撃を受ける可能性もあるわけでセキュリティ上の問題が見つかればアップデートも必要なはずだが、アップデートは滅多に行なわれないし、いつまで無償でサポートするのか明示していない。

またメーカーが保守開発をひっそりと止めてしまったソフトウェアというのは沢山ある。一太郎や三四郎、ロータス123はすでに保守開発していないので、セキュリティホールは放ったままだ。Macintosh OSも最新バージョン以外は直ぐに保守を止めてしまうので、数年ごとにOSを買換えていないなら危険だ。

Windows XPに限った問題では無く、保守開発はコストがかかり、保守開発を維持していないソフトウェアを継続利用してはならないって、本質的な問題について議論する必要がある。

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