Windows 2003 Server 延命策の海外との温度差

「Deadline Extension 2003 Server」で検索した結果を見ると、そこには「延命策など無い」と移行を促す記事がならんでいる。対して「2003 Server 延命」で検索すると、延命ソリューションの解説記事が並ぶ。このあたりに日米のリスク感覚の違いを感じる。まるで延命という処方箋があるかのような記事が国内には多いが、延命策は所詮延命でしかない。恒久的に延命できるわけでもないので、移行策を平行して実施する必要があり、移行にかかるコストををさらに増やすことになる。

とわ言え、移行が間に合わないなら、間に合わないなりの対策が必要なのは事実。「サポート終了までに移行が間に合わない場合」の延命策に過ぎないこと、延命できる期限があることを明示している点でトレンドマイクロの延命策はまだ好感を持てる。他のデベロッパーはもう少し見習ったほうがよい。

元々WindowsOSのサポート期間は最短で発売から10年間とされている。次期バージョンの大幅な開発遅延など、よほどの事情がない限りこの期間は延長されない。10年の猶予があっても移行すらままならないというのは異常事態だ。

異常事態に陥る本当の問題は保有するIT資産の総量に比較して、IT予算が少なすぎたり、IT部門の人員が不足している事にある。抜本的な対策はIT資産を減らすか、IT部門を増強するしかない。IT資産を減らすなら社内のITシステムの内、市販のパッケージソフトやSaaSに置換え可能な物は既存システムを破棄して移行をすすめ、身の丈にあったサイズまでIT資産を減らさなければならない。逆にIT部門を増強するとなるとかなり難しい。3年前ならいざ知らず、今はITエンジニアを募集しても簡単には集まらない。短期的には外部のコンサルタントに頼りながら、人材を育てていくしか無いだろう。

Windows XPというベストセラーOSのサポート終了から間もないこともあって注目を受けたが、サポート終了というのは毎年のように発生するありふれた話に過ぎない。今後もサポート終了にまつわる話は間断なく続く。

例えば.Net Framework 2.0の延長サポートは2016年4月12日で終了する。.Net Frameworkとは聞き慣れないかもしれないが、Windows用アプリケーションを作るための製品、Visual Studio 2005で開発したアプリケーションが使用するフレームワーク(ミドルウェア)だ。Visual Studio 2005の後継となるVisual Studio 2008が発売されたのは2008年2月だから、2008年以前にMicrosoftの開発ツールを作って作られたアプリケーションの大多数が対象となる。単にOSを更新するだけで良いWindows 2003 Serverに比較して遙かに難易度が高い。

SQL Server 2005の延長サポートも2016年4月12日で終了する。SQL Serverは後方互換性が高いので移行にあたって技術的な問題が発生する可能性は低いが、機器更新費用やライセンス費用が発生するのは避けられない。

Office 2007の延長サポートも2017年10月10日で終了する。単純にOffice 2007を使わなければ良いという話では無い。Office 2007のサポートが終了すれば、早晩旧Officeのファイル形式(拡張子XLSやDOC)との後方互換性も提供されなくなる可能性が高い。旧Officeのファイル形式は20年以上にわたって使われており、大量に蓄積されているはずだ。これらのコンバートを検討しなければならないということになる。

先進的な技術をキャッチアップして移行もスムーズに乗り越えているような企業であるなら、今頃はWindows Server 2014やSQL Server 2014、Windows 10への移行を何時ごろ進めるのか、新機能をどのように活かすのかといった話を進めているところである。日本はホワイトカラーの労働生産性が低いといわれるが、その原因のひとつがIT資産の維持管理がままならず、先進的な技術をキャッチアップできていないことにあると思う。もしWindows 2003 Serverの移行で頭を抱えているなら、この機会に本質的な問題に向き合って、先進的な技術をキャッチアップできる体制を考えてほしい。

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