緊急地震速報(警報)で震度7の警報が出たにもかかわらず、有感地震が無かったことが誤報として問題視されている。同様の誤報は数年おきに発生しており、今回が初めてと言う訳でもありません。
緊急地震速報の仕組み自体は気象上の緊急地震速報(予報)発表状況にかなり詳しく記載してあり、なぜ誤報が起こるのかまで記載されています。
緊急地震速報は次の様な仕組みになっています。
2箇所以上の地震計で、地震のP波と思われる振動を捉えると、震源地や最大震度を予測して、その結果を緊急地震速報(予報)として関係諸施設に送信します。一回計算して終わりでは無く、新たな地震計のデータを加えて何度も予測計算を繰り返し、そのたびにより正確な緊急地震速報(予報)を送信します。予測される最大震度が4.5超える場合には緊急地震速報(警報)を送り、スマホからおなじみの警報音が鳴り響くことになります。
ここでお気づきと思いますが、2箇所の地震計の観測データから震源を計算したとしても、その震源は帯状の範囲としてしか予測できません。正確に震源を特定するなら最低でも3箇所、出来れば4箇所以上の地震計のデータが必要になります。それにも関わらず2箇所の地震計のデータで震源を計算しているのだから、誤報が発生して当たり前のシステムなんです。
緊急地震速報は全国に約1700箇所ある地震計を使用しています。日本の陸地面積は378000平方Km。仮に地震計が一様に設置されているとしたら、約222平方Kmに1箇所、およそ15Km間隔で地震計が設置されています。 P波が地中を伝わる速度は約7Km/sだから、3箇所目の地震計からのデータを待つなら最大で2秒程度遅れることになります。現状でも緊急地震速報警報が伝わってから、S波到達までの時間的余裕は数秒~数十秒でしかありません。3箇所目のデータをまつために2秒遅らせたら、緊急地震速報は本震に間に合わず、存在意義を失います。そのため不正確なのを承知の上で、2箇所に地震計のデータで処理を行っているわけです。
緊急地震速報の予測震度が大きくずれる原因はある程度わかっています。
・震源が陸から(地震計から)大きく離れている場合
・地震発生と同時に、周辺の地震計が地震以外の震動や電気的雑音を拾った場合。
・たまたま複数の地震が同時に発生した場合。
・地震計の故障などにより、使える地震計が少ない場合。
今回は大きな地震発生から間もないため頻繁に地震が起きており、また地震計も被害を受けているため使える地震計が少なく、誤報が発生しやすい条件下にあります。
緊急地震速報は、ある程度の誤報を許容する事で、より早く警報を出せるようにしたシステムです。誤報の発生を許容する警報システムそのものを問題視する議論ならわかります。そこを無視して、緊急地震速報に誤報の再発防止だの、誤報を出したことの管理責任を求めたりというのは、エンジニア目線だとわりと滑稽な話です。
2024年1月1日16時移行、13回の緊急地震速報の警報を発表している。震度5を越えても警報が出なかったのが3回になっている。人命や減災を意識するなら、実際の震度が低いにもかかわらず発報してしまった場合よりも、実際には震度5を越えているのに発報できなかった事を問題視するべきはずだ。だが、逆の事をしているあたりが、リテラシーの低さを物語っています。