SOHO向けバックアップの在り方

RAID対応のNASにデータを集約する

もし各パソコンにデータを保有させていたり、パソコンをサーバー代わりに使っているなら、まずはRAID対応のNASを導入してデータを一箇所に集約する事をお勧めしたい。データが各パソコンに分散していると、バックアップにかかる手間もパソコンの台数分に発生する。またパソコンをサーバー代わりにしている場合、耐久性や信頼性の面でどうしても劣るからだ。

またRAIDを構成する場合には、以下の条件を満たさない限りRAID1以外・・・RAID0やRAIDO5、6、10を選択してはならない。
・24時間365日対応のオンサイト保守サービスを契約している
・1台のHDDでは実現できない容量のパーティションを必要としている、または1台のSSDでは実現できない速度を必要としている。

困ったことに一部のメーカーはRAID5やRAID6、時にはRAID10が高い信頼性と性能を誇るかのようにカタログに載せている。確かにRAID5やRAID6、RAID10なら信頼性を維持しつつ、性能を高める事が出来る。だが信頼性はRAID1と同程度、保守性の面ではRAID1より低下している。

またHDDではなくNASの本体が故障した場合には、RAID5やRAID6、RAID01を使用しているとデータの復旧が困難になる。ちょっとパソコンに詳しい程度ではお手上げだろう。専門のデータ復旧業者に依頼する必要があり、最短でも数日の時間と数十万円の費用を必要とする。RAID5やRAID6、RAID10を使うなら、24時間365日のオンサイト保守サービスを契約していて、直ぐに本体を修理して貰える事が必須要件となる。

これがRAID1なら適当にパソコンにLinuxをインストールしてNASから取り出したHDDを接続すればデータを取り出せる可能性が高い。ちょっとパソコンに詳しい人なら自力でもデータを取り出せる。

NASのデータをクラウドにバックアップ

画像や動画などの大容量のデータについては、AWSやAzureといったクラウドのオンラインストレージにデータをバックアップすることをお勧めしたい。最近のNASであれば、クラウド上にデータをバックアップする機能を提供していることが多い。容量単価を考えた場合、Google DriveやOne Driveの容量単価に比較して、AWSやAzureのオンラインストレージの方がはるかに安上がりになる。

小さいデータならOffice365やGSuiteを活用

比較的容量の小さいWordやExcelのファイルなら、Office365やGSuiteの有料プランを購入することをお勧めしたい。独自ドメインのメールサーバとして使ったり、取引先との大容量ファイルの交換に使ったりと、使用する範囲は広い。それらを個別に用意することを考えたなら、有料プランを契約しても、そう高い買い物ではないはずだ。

ちなみにOffice365やGSuite等のクラウド上においたデータをマスターとするなら、逆にクラウドからHDD等に定期的なバックアップをしておくことを忘れないように気を付けたい。クラウドサービス事業者側の事故でデータが失われることも、皆無ではない。また障害により一時的に利用できなくなることもある。業務を止めないためには、手元にもデータの複製を置いておくことを忘れないようにしよう。

個人向けのバックアップのあり方

台風で多くの水害が発生した。

災害の発生の度に憤りを覚えるのは、多くのユーザーがバックアップをとれていない事だ。

バックアップには以下の三要素を満たしていることが望ましい。

1.通常の利用権限で上書きされない。
2.遠隔地に保管されている。
3.最新版だけではなく、過去の履歴も保管されている。

以前は個人でこれを満たすのは相応にコストが発生していたが、今はクラウドサービスのおかげで、ほぼ無料で実現できる。

・Google PhotoやAmazon Photoの活用

Google Photoは16メガピクセルまで(動画はフルHDまで)と画像サイズの制限があるが、私的な利用には十分な品質の画像のはずだ。無料で容量無制限にクラウド上に画像データをバックアップすることが出来る。
Amazon Photoはプライム会員になっていれば容量無制限で写真データをアップロードできる。
またファイル名が同じでも内容が異なっていれば別のファイルとして扱われる。ランサムウェアなどによってファイルが壊されていたとしても、クラウド上のファイルが上書きされてしまうことを心配する必要はない。

・Google DriveやOne Driveの活用

私的な利用なら写真や動画を除けば容量はそれほど大きくならないと思われる。Google DriveやOne Driveの無料枠であっても、そうそう容量を使い果たすことはないはずだ。仮に容量を使い果たすようならば、素直に有料プランに移行するのが良いように思う。
こちらもファイルが更新される毎に、更新前のファイルは別に保管されている。したがってランサムウェアなどによってファイルを壊されても、壊される以前のファイルを得ることが出来る。
GoogleDriveならファイルを選択して「版を管理」を選択すれば、最新版に更新される以前のファイルをたどることが出来る。OneDriveも「バージョン履歴」という機能で、同様のことが出来る。

いずれも日々のバックアップ操作を意識することは少ない。専用のアプリをインストールしておけば、バックグラウンドで処理を実施してくれる。

災害に限らず、故障やランサムウェアへの感染などによりデータを読み出せなくなる危険は常に存在している。最低限度のバックアップはリテラシーとして身に着けてほしい。

選挙を電子投票に出来ない理由

引き続いて電子投票に出来ない理由とか語ってみる。

全国に投票所の数は4万7千箇所。一箇所当たり10台程度の端末を配置するとしても47万台。全国4万7千箇所の拠点をネットする、47万台の端末からなるオンラインシステムを2週間程度でセットアップする・・・単純な物量だけでもゾッとしますね。

物量だけの問題なら別に良いのです。簡単ではない理由は他にもあります。

・オフグリッド
ネットワーク障害や停電、サーバの障害は全国様々な場所で毎日のように起こっています。全国数万箇所を接続するとなると何処も障害を起こさないと言うことはほぼ不可能ですし、悪意をもって妨害される可能性も考慮すると、オフグリッドでも使える事が求められます。

・多重バックアップ
万が一にもデータが失われることがあってはなりません。データは常に多重にバックアップ(最低でも三つ。二つだと差違があったときに、どちらが正しいか判断出来ない)される事が必要です。

・堅牢性
多重のバックアップに加えて盗難出来ないように固定する処置や、記録メディア自体が破壊されないような処置が必要です。

・長寿命
選挙は 何時行われるか分からない ため、端末やサーバーは事前に購入し、数年間にわたって保管・維持しておくことが求められます。

上記のような要件を満たそうとすると、市販のタブレットをそのまま使う事が難しいと分かっていただけるかなと思います。

なおかつ操作が簡単である事はもちろん、きちんと投票が出来てることを投票者が確認出来る必要があったりと、存外面倒な要件が沢山あるのです。

選挙をインターネット投票に出来ない理由

社内SEは出来ない理由しか言わないという記事をみて心が痛いので、最近よく見る選挙のインターネット投票をできない理由を語ってみよう。

投票制度には二つの要件があります。一つは匿名性。誰が誰に投票したのかは分からない事が求められます。二つ目は信憑性。投票内容が改竄や成り済ましなど不正が行えない事が求められます。インターネット投票の実現が難しい理由は、信憑性と匿名性を両立する良い方法が無いからです。

信憑性を保持するための最も単純な方法は、投票内容に電子署名を付与することです。ですが電子署名は投票者個人に結びついているため、誰が誰に投票したのか明確に記録されてしまいます。匿名性は完全に失われます。

信憑性を保持する為の方法として古くから行われてきた方法に監査ログがあります。データベースへのあらゆる操作を時系列にそって保存したログファイルです。データには誰が投票したのかの記録を残さず、かつ監査ログで改竄を検知すると言うことは出来ます。ですが、全ての操作を保存しているが故に、ログを丁寧に分析すると結局誰が誰に投票したのか分かってしまう可能性が高いです。匿名性は不完全なものになります。

電子署名も監査ログも無し。データ上は誰が投票したのか紐付けないとなると、サーバー管理者は容易に改竄できてしまいます。匿名性を維持できても、信憑性がありません。これでは投票として成立しませんよね。

現状の技術でインターネット投票を成立させるには、投票の匿名性を諦め、記名投票にするしかありません。先行してインターネット投票を実施しているエストニアのシステムも各個人に発行された公開鍵暗号をもちいた電子署名によるもので、匿名性のないものになっています。

よく言われる「拘束して無理矢理投票させる場合があるから」とかは、拘束している時点で刑事罰の対象です。またエストニアのインターネット投票では投票期間中は何度でも変更投票を可能とすることで、強要のリスクを軽減しています。

SOHO用のNASに必要な要件

SOHO環境のNASをどうするか思案した結果、3ベイモデルのNASに行き着いたので、参考までにとりまとめておく。

SOHO向けNASの考察

SOHOにRAID5/6は不要

RAID5/6を構成できることを売り文句とする簡易NASが売られているが、安易にRAID5/6で構成してはいけません。RAID5/6の欠点も正しく知っている必要があります。

RAID5/6のHDDで物理障害が発生した場合には復旧は困難を極めます。例えばNAS本体が故障した場合、あるいは複数台のHDDが障害を起こした場合、これを普及するには同一型番のNAS本体なり、あるいはNASをマウントする専用のソフトウェアが必要になります。専用機材を持たない状態では手が出せないため、業者に委託せざる得なくなる可能性が高く、速やかな復旧は望めませんし、HDD4台程度のNASでも数十万の復旧費用がかかることになります。

RAID5/6のメリットはHDD1台では実現できない大容量を実現できる点、複数台のHDDに分散することで高速な読み書きを行える点にあります。ですが8TBのHDDでも、2TBのHDDでも容量単価は殆ど変わりません。大容量のメリットを得られるのは8TBを超えるパーティションが必要な時だけです。容量が8TB以下ならRAID1で十分です。高速化が必要ならRAID5/6よりもRAID10のほうが優れていますし、SSDをキャッシュとして使用するのも効果的です。

つまるところRAID5/6が必要なのは、RAID0/1/10では賄えないような、16TBを超える大きなパーティションが必要な場合に限られると言うことです。

SOHOならRAID1が理想

復旧作業を考えるならばRAID1が理想的です。よほど特殊なファイルシステムを採用していない限り、既存のPCでマウントするだけで直前に保存されたファイルも含めて復元することが出来ます。

高速性が必要ならSSDキャッシュを

高速性が必要ならSSDのキャッシュを設けた方が実効性が高いです。 RAID5/6/10でHDDの台数を増やすよりも 高い実効性を期待できる上に、先に述べたように復旧作業を考えるなら RAID5/6/10 は避けたいところです。

バックアップ機能も必要

RAIDにしているからと言ってバックアップが不要になるわけではありません。誤った操作によりファイルを上書きした場合など、バックアップがなければ対処できません。したがってバックアップ用のドライブも必要です。

出来れば世代別バックアップを行えるように、共有用パーティションの2倍程度の容量が必要です。

SOHO向けNASの まとめ

以上の条件を踏まえると、共有ストレージとしてRAID1を構築するためにHDDを2ドライブ、バックアップ先とするためにHDDを1ドライブ、合わせて3ドライブ以上のNASが必要ということになります。これに加えて、高速性も求めるならSSDをキャッシュとして利用できるもの必要です。

この条件を満たすNASを探していた時にたどり着いたのがQNAPの QNAP TS-332X/351/328のシリーズ。 他社だと2ドライブより上位のモデルは4ドライブになってしまい、少々オーバースペックとなってしまいます。ですが、QNAPのこのシリーズは 3.5インチのHDDを3台まで搭載できるというよく考えられた製品です。 TS-332X/351 ならSSDキャッシュを設けられるので速度面でも十分です。

ちなみにQNAPは中々尖った製品が多くて面白いです。比較的に安価なNASにも10GbE SFP+ポートを設けていたり、GPGPUやLGPAによる演算をサポートしていたり、仮想OSのホストになれたり、もはやNASの皮をかぶったサーバーですね。QSW-804-4Cなんかも10Gb HUBとしては最安値なんじゃないかな。

WEBサーバーの移行をしました

ようやく重い腰を上げて、サーバーのバージョンを更新しました。

これに伴ってクラウドベンダーをScalewayからVultrに切り替えました。
VultrもScalewayと同じく、月額250円前後~で格安VPSを提供しています。

Vultrの最大のメリットは日本にDCを持っている事。 Scalewayのほうが若干ですがサーバー性能・・・特にSSDの性能は高いのですが、待てど暮らせどEU以外にDCが作られる様子がないのですよね。Cloudflareと併用することでネットワークの距離に起因する応答速度の問題はクリアできていましたが、SSHなど保守作業においてレスポンスが遅いのは如何ともしがたく、 Vultrに写ることにしました。

今回はサーバーを再構築するにあたり、漸くDocker Composeベースで環境を構築することにしました。Docker Compose良いですね。現状で動かしているのはWordpressとGitbucketだけなんですが、公式イメージがDockerHubに上がっているような環境については、殆ど何もすることがなく環境を構築できるのは便利ですね。

加えてMongoDBや.NET Core環境も動作させたいのですが、流石にメモリ1GBのプランでは厳しいかな。

遠近両用コンタクトレンズを使ってみた

子供に悪戯されることもあって、久しぶりにコンタクトレンズに戻しました。所が一つ問題が・・・「あれ?スマホの文字が読めない・・・」まだ若いつもりでしたが完全に老眼です。メガネは普段外してて、必要時に掛けてたので気がつきませんでした。

そこで以前から興味を持っていた遠近両用コンタクトレンズを使ってみることにしました。人間の瞳孔は明るいところで小さく絞られ、暗いところで大きく開きます。実は明るさ以外にも、近くをみるときには小さく絞られ、遠くを見るときには大きく開きます。これを利用してコンタクトレンズの中心部分を老眼用に低い度数に、外側部分を高い度数にしたのが、遠近両用コンタクトレンズです。

もともと視野の中心部分は、レンズを真っ直ぐに抜けていく光が焦点を結ぶ部分だから、レンズの中央部分に度が入って居なくてもキチンと焦点を結べるわけです。ただし視野の外苑部分は中央の度が入って居ない部分と、外側の度が入って居る部分の光が焦点を結べないのでぼけた感じになります。

また極端に明るい場所だと瞳孔が開かないため、レンズの外側の度が入った部分で見ることが出来ず、遠くが見えません。 逆に暗い場所だと瞳孔が開いてしまうために、レンズの外側の度がはいった部分を使ってしまい、近くが見えません。

遠近両用コンタクトレンズの欠点は、 視野の外縁部がぼけてしまうことと、明るすぎると遠くが見えず、暗すぎると近くが見えないことです。球技などのスポーツを行う場合や、工事現場や工場など絶えず周囲に気をつけなければならない人、屋外の明るい場所や暗い場所で作業するひとには向きません。

私は事務仕事なので、夜間の運転さえ避ければ問題無さそうです。

実際に使ってみた感想なのですが、外縁部のぼけなど全く問題を感じないレベルでした。もともと細かな文字を見るときや運転以外は裸眼で過ごす時が多かったかもしれませんが、市や中心以外のボケも意識しないと気がつかないレベルです。

問題になるのではないかと思っていた夜間の運転ですが、元々度数がそれほど高くない(-2.5程度)からか、裸眼よりもよく見えてます。運転にも支障が無いレベルでした。

老眼の程度がさらに進行するとまた違うのだろうけど、当面は愛用することになりそう。

購入した電子書籍が読めなくなるとき・・・

わりとリツイートされていたので補足。電子書籍が出版社の都合で突然読めなくなる場合があるのは、これが「期間の定めのない契約」による所が大きいのです。

電子書籍の販売はAmazonの場合は次の様な契約関係にあります。
電子書籍の利用者はAmazonを通じて代金を支払います。利用者が支払った代金は仲介手数料やシステム手数料などを差し引いた後に、出版社に支払れます。実際にはAmazonは仲介するのみで、利用者は出版社に代金を支払い、利用者と出版社の間でコンテンツ提供の契約をおこなっています。

この契約には期間の定めがありません。一般的な感覚だと「期間の定めのない契約」は、未来永劫にわたって契約を遂行する義務があるように感じるかもしれません。ですが法律上の「期間の定めのない契約」は合理的な理由があり、十分な告知期間を設ければ、何時でも解約して良い契約とされています。合理的な理由には以下のようなものが想定できるでしょう。
・出版社が倒産した場合
・出版社またはAmazonが電子出版事業を終了した場合
・出版社と著作権者との契約が終了した場合
・自主規制等により書籍の販売を終了する場合。
電子出版以外での判例を見る限り、告知期間はおおむね四ヶ月程とれば妥当とされているようです。

むろん上記以外でも、合理的な理由があり、妥当な告知期間を設ければ、一方的に解約する事ができます。もしも不服であるなら民事訴訟で「社会通念上合理的と言える理由か?」を争うことになります。でも日本の司法は実損主義なので、仮に裁判で争って勝訴したとしても購入代金の返金を受けられる程度でしかなく、実際に訴訟を起こすのは難しいでしょう。

事務に使う業務用パソコンに限ってはVDIも良い

最低限必要なパソコンのスペックって」の話の続き。

事務用パソコンに限った話だが、もし一拠点の事務用パソコンの台数が15台以上あるならVDI(Virtual Desktop Infrastructure、仮想デスクトップ基盤)を検討してみるのもよい。

VDIには様々なソリューションがあるが、おすすめしたいのは、最もコストパフォーマンスに優れる、Windows Server 2016にRDPで接続する、正確にはSBC(Server Based Computing)と呼ばれるタイプ。

パソコンを購入する場合、処理のピークを短い時間で終わらせるために十分な性能のCPUやストレージを用意する必要があります。ですが処理のピークが続くのは数秒(ピークが数秒で終わる程度の性能を持つCPUとストレージを準備したのだから当然だ)でしかありません。それ以外の時にはパソコンの持つ性能の数%しか使っていないので、潜在性能の10%も活用できていない事になります。

もしCPUやSSDを複数のユーザーで共有できるなら、メモリを16GBも積めば1台のパソコンで8人程度が同時に作業しても、体感速度はほとんど変わらないはずです。

そこで十分に高い性能を持つサーバーを用意します。そのサーバにシンクライアント端末という低性能な端末(モニター、マウス、キーボードが繋がっているだけで、実質的にCPUにメモリやストレージはありません。単体ではパソコンとして機能しません。)で接続して使います。それでもユーザーにとっては、普通にパソコンを使っているのと操作は変わりません。

仮に15人の場合には概ね下記のような金額になります。
サーバー(8コアCPU、メモリ32GB、SSD1.4TB RAID5)が90万円。シンクライアント(モニター込み)が5万円×15台で75万円。Windows Server 2016のCALが5000円×15台で7.5万円。割安なOfficeのプレインストールモデルを使うことは出来ないので、Office 2016 Std(約5万円)を購入するか、Office 365 ProPlus(月額1,310円)を契約する必要があります。トータルで250万円ぐらいで導入できるはずです。

15万のパソコンを15台買うなら225万円ですから25万円ほど割高になっています。でもそれ以上にメリットもあるのです。

・メンテナンスの手間が激減
サーバーにだけ設定すればよいので、手間が激減します。新しいプリンタのドライバや業務アプリケーションをインストールするにも、15台のパソコンにインストールしてあるく必要はありません。VDI用サーバ1台にインストールすればOKです。

・バックアップの手間が激減
クライアントパソコン内に保存されている設定やデータのバックアップはかなり大変です。実際にはパソコン内のデータバックアップは諦めている事が多いでしょう。VDI用サーバーのバックアップさえ取っていれば、各自のデスクトップやマイドキュメントのファイルもしっかりバックアップをとれます。

・故障時の復旧作業が激減
パソコンが壊れた場合、新しいパソコンに必要なアプリケーションのインストールや設定を施し、故障したパソコンのHDDが必要なデータを取り出してコピーする。場合によっては1日~2日は潰れてしまいます。VDI環境なら設定やデータはVDI用サーバーに保持されているので、新しいシンクライアント端末をつなぐだけで復旧します。予備にシンクライアント端末を1台余計に買っておくなら、30秒で復旧できるのです。
サーバが壊れた場合ですが「5年間24時間365日4時間以内に訪問修理」とかを購入時に申し込んでも+30万円程度です。年間6万円程度の支出に過ぎません。同じ事をパソコンで申し込んだら+100万円、年間20万円程度かかるであろう事を考えたら、安いものです。

・体感速度はむしろ向上
サーバー全体ではCPUのコア数もSSDの速度も、個人にパソコンを与えていた場合の2倍ほどになってます。したがってピーク時の処理性能も個人にパソコンを持たせていたときの2倍、ユーザーを待たせるような重たい処理も短時間で終わるようになり、体感速度も増します。

・在宅勤務やサテライトオフィスにも対応
VPNによる社内ネットワークへの接続方法さえ準備すれば、流行の在宅勤務やサテライトオフィスにも対応できます。全従業員を対象とするのは内部統制的な難しさもあるでしょうけど、部長の自宅にVPNルーターとシンクライアントを設置(10万円程度)するだけで「自宅でも会社と同じ作業ができる」ぐらいの事は簡単に実現できます。

ちなみに15台だと25万円ほど高くついてますが、30台だとサーバ(16コアCPU、メモリ64GB、SSD1.4TB RAID5)の価格が約160万円、他は同じだから総額で約320万円。15万のパソコンを30台買うと450万円なので、130万円くらい安くなる計算です。こうなると事務用パソコンに限っては、VDIを使わない理由は無いですね。

ちなみに技術者用パソコンをWindows Server 2016のRDPで共有するのは無理です。一般ユーザーよりも強い、管理者権限やデバッグ権限を与えてもらわないと仕事になりません。頻繁に管理者権限で設定を変更することになるので、ちょっとしたミスで全員巻き添えで仕事がとまる可能性が高いです。Hyper-VやVMWareを使ったVDIなら行けますが、さらにコストが高くなります。

またデザイナ用パソコンをVDIにするのは完全に無理です。GPUが使えなくなる上に、画面上の表示品質下がるので、おそらく仕事になりません。

最低限必要な業務用パソコンのスペックって

低スペックPCを使わせる事の損失・・・
人権を満たす最低スペックのパソコンとか、Twitterで話題になっているようなので、補足説明ておく。

・事務職・・・15万円前後

CPU:Intel i5 or i3(4コア)
メモリ:8GB(4GB×2枚)
ストレージ:SSD 128GB
モニタ:24インチ(設置スペースがあるならデュアルモニター)

事務職でこれが最低スペックな理由は、これ以上スペックを落とすと価格差以上に性能が低下してしまうため。例えばCPUをCeleronに落とすと数千円安くなるが、性能は半分以下になる。モニターも20インチにすれば数千円安くなるが、A4資料を画面上で閲覧することすら困難になる。
メモリが8GBなのには二つの理由がある。
一つ目はデュアルチャンネルを有効にするため。同サイズのメモリを2枚さすとデュアルチャンネルが有効になってメモリアクセス速度が2倍になる。同一メモリサイズでもデュアルチャンネルが有効か否かで実行速度が30%前後異なってくる。2GB×2枚でもデュアルチャンネルは有効になるが、2GBのメモリカードはほとんど製造されておらず流通していない。メーカーによっては16GB(8GB×2枚)以上にしないとデュアルチャンネルが有効にならない場合もある。この場合には16GBにしたほうが良い。
二つ目はメモリスワップが発生した場合にSSDの寿命が短くなってしまうこと。最近のアプリケーションはメモリをたくさん使って早く動かす設計になっていることが多い。そのためWEBブラウザだけでも1GB程度のメモリを使ってしまうことは珍しくない。SSDの欠点は書込み可能回数に制限があり、頻繁に書込みを行うと寿命が短くなることにある。メモリが不足してメモリスワップが発生し、SSDへの書き込み回数が増えると、SSDがより早く寿命を迎えることになる。SSDの容量を増やせば書込み可能回数も増やせるが、SSDよりメモリのほうが安い。
SSDが128GBとかなり小さいのは、日常的に使用するデータはファイルサーバに保存していると考えているため。128GBでも事務作業で使用するようなアプリケーションのインストールや、一時的な作業ファイルを置くのに、困ることは少ないと思う。128GBより小さくすること、Windows Updateのための作業領域が不足するなどの問題に直面する。

・技術職・・・30万円前後

CPU:Intel i5 又は i7
メモリ:16~32GB
ストレージ:SSD 256GB+HDD 数TB
モニタ:27インチ(設置スペースがあるならデュアルモニター、2台目は24インチでも可)

最低メモリが16GBに増えている。エンジニアは複数のツールを同時に起動して作業する機会がどうしても増える。統合開発環境などは、メモリを多く使う事が多い。WEBブラウザに、Officeに、メールに、統合開発環境に、ビジネス用チャットに・・・と立ち上げていくと到底8GBのメモリ消費では収まらない。最低でも16GB必要となる。

できれば32GBほしい。32GBあると仮想OSをストレスなく利用できる。仮想OSを使うと、テスト用のOSを作業前に保存していた状態に数十秒で戻すことが出来る。そのためインストールのテストや、環境を壊す恐れのあるようなテストが非常に捗る。仮想OSを使えないと、たびたび半日かけてOSを戻す羽目になるので、かなり大変なのだ。
またメインで使用している環境に共存できないソフトウェアを使ってテストしなければならない場合も便利である。特定バージョンのOSでしな再現しない問題や、古いバージョンのOfficeでしか再現しない問題などをテストするために、別途パソコンを用意してゼロからインストールしていては時間がかかりすぎるのだ。

CPUは早いに越したことはないですが、i7以上のCPUや、高速なグラフィックスカードは機械学習でもするのでない限りは必要ないです。

・デザイン職・・・50万円前後

CPU:Intel i5 又は i7
メモリ:16~32GB
ストレージ:SSD 256GB(容量不足時にはHDDを追加)
GPU:5万円前後
モニタ:27インチ(カラーマネジメント対応)

CADやCG、動画を扱うなら上記の技術職向けPCに加えて、5万円程度のGPUが必要になります。
そして何より重要なのがモニターです。安物のモニターだと微妙な色の差を視認できなかったり、モニター毎の発色の差を微調整する機能が不足していて、色校正に手間どってトラブルの原因になります。カラーマネジメント機能のついたモニターは、一般的な事務用モニターの価格より2~3倍ほど高いです。27インチモニターだと20万円ちかい金額となります。
意識せずにマックを使っているデザイナーも少なくないですが、デザイン職にマックが支持されてきた理由もここにあります。マックのモニターは最初から同じ発色になりように微調整されて販売されており、カラーマネジメントの云々を意識する必要がないのです。カラーマネジメント機能のついたモニターを買うと、結果的にマックと変わらない値段になってしまいます。もしデザイナーがWindowsではなくてマックで仕事をしたいというなら、素直にマックを買ってあげたほうが安いです。

でも、事務用に限るならパソコンを使う事自体を止めてしまう手もあります。「事務用に限ってはVDIの方が良いかもよ?」に続きます。